【メディア掲載一覧】
過去に一般向けに書かれた記事をまとめました。

月刊「化学」
 極小時間に生じる有機発光材料の分子変形を観測!
 ― 第三世代有機EL 材料の発光効率向上に向けて
(恩田)

Chem-Station記事
 有機無機ハイブリッドペロブスカイトはなぜ優れているのか?(宮田)

Chem-Station記事
 分子振動と協奏する超高速励起子分裂現象の解明(宮田)

Chem-Station記事
 超高速レーザー分光を用いた有機EL発光材料の分子構造変化の実測(西郷)


時間分解分光を用いた化学的過程の解明
化学はその名の通り、物質の変化を扱う学問です。しかし実際にその変化が起こっている過程を実時間で知ることは難しく、通常は変化が起こる前後、つまり反応物や生成物を精密に調べることにより、その途中のプロセスを推測しています。これは、物質の変化が非常に高速で起こり、また非平衡状態という物理的に取り扱いの難しい状態を経て起こるためです。しかしもし、このようなプロセスを実時間で精密に分析することができれば、化学反応や機能性物質の理解が飛躍的に深まり、その設計が容易になることが期待されます。そこで我々は、基礎あるいは応用面で重要な物質系を対象に、その動的過程を実時間で観測可能な超高速分光装置を開発し、それを用いて物質の変化するプロセスを詳細に解明する研究を行っています。これまでの主な研究成果を以下に簡単に紹介します。



1. 遷移金属錯体の光励起過程
遷移金属錯体は、高いエネルギーに比較的安定な光励起状態をもつことから、人工光合成、有機太陽電池、蛍光プローブ、光有機合成など光を用いる多くのシステムで利用されています。しかしその光励起過程は非常に複雑なため、これらのシステムを設計する上での課題となっています。そこで私たちは、このような過程における過渡的な電子状態や構造を知ることができる時間分解赤外振動分光法をを開発しました。これを用いてこれまでに、基本的なルテニウムジイミン錯体や人工光合成において主要な役割を果たす様々な錯体の光物理的、光化学的過程の詳細を明らかにすることに成功しました。



[参考文献]
T. Mukuta, et al. Inorg. Chem. 53, 2481 (2014).
S. Tanaka, et al. J. Photochem. Photobio. A: Chem. 313 87 (2015).
T. Mukuta, et al. ChemistrySelect, 1, 2802 (2016).
S. Tanaka, et al. Chem. Phys. Lett. 662, 120 (2016).
T. Mukuta, et al. Inorg. Chem. 56, 3404 (2017).


2. 分子性結晶の光誘起過程
分子性結晶は周期的な分子間の相互作用により、電気伝導性など単体の分子では得られない多くの機能を持つことが知られています。現在、このことを利用した様々な有機エレクトロニクスデバイスへの応用が期待されています。私たちは、このような分子性結晶の機能を光によって制御することをめざして、結晶を光励起した後に起こる様々な現象の解析を行っています。結晶中では、単分子における分子内相互作用に加え、分子間の相互作用があるあることから、その現象は広いエネルギー、広い時間に及ぶことが予想されます。そこで、遠赤外から紫外の広いエネルギー範囲、数フェムト(10-15)秒からナノ(10-9)秒の広いる時間範囲で現象を観測できる分光装置を開発し、1次元有機導電体における多段階にわたる機能変化の観測に成功しました。


[参考文献]
恩田健ら, 日本物理学会誌, 69, 531 (2014).
恩田健, 応用物理, 83, 456 (2014).
K. Onda, et al. Acc. Chem. Res., 47, 3494 (2014).
K. Onda, et al. Phys. Rev. Lett., 101, 067403 (2008).
N. Fukazawsa, et al., J. Phys. Chem. C, 116, 5892 (2012).
N. Fukazawsa, et al., J. Phys. Chem. C, 117, 13187 (2013).


3. 不均一触媒反応過程
粉体状の酸化物、化合物を用いた不均一触媒は、反応相との分離が容易であり高い耐久性をもつことから化学物質の大量生産には欠かせません。しかし、その構造はナノレベルで不規則な凹凸を持つため、通常の分光手段ではブロードなスペクトルしか得られなません。私たちは超短パルスレーザーを用いた時間分解非線形分光法を開発し、このような粉体表面に吸着した分子の反応中間体を検出することに成功しました。さらに、このような不均一触媒のモデルとなる規定された表面を超高真空中で作製し、表面敏感な時間分解分光法を用いて、過渡的状態の同定にも成功しました。



[参考文献]
恩田健, 分光研究,62,213 (2013).
K. Onda, et al. J. Phys. Chem. B, 105, 11456 (2001).
K. Onda, et al. J. Phys. Chem. B, 107, 11391 (2003).
K. Onda, et al. Chem. Phys. Lett. 370, 437 (2003).
K. Onda, et. al., Science, 308, 1154 (2005).
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九州大学 分光分析化学研究室