沿革 

 九州大学の前身である九州帝国大学に理学部が設置されたのは昭和14年(1939年)のことでした。私たち化学科は物理学科、地質学科とともに開設され、無機化学、有機化学、構造化学の3講座(研究室)でスタートしました。その後、昭和15年に物理化学、昭和16年に分析化学、昭和19年に生物化学の各講座が増設され、現在の化学科の原型となる体制が完成しました。終戦後、昭和22年の帝国大学令の改正に伴い、九州大学として再発足したのち、昭和42年から44年にかけて有機反応化学、放射化学、量子化学、高分子化学、錯塩化学、酵素化学、物性化学の7講座が増設され、教員の増強と研究教育環境の整備が行われました。その間、多くの卒業生をさまざまな分野に送り出し、化学を通して日本の高度成長に貢献してきました。平成5年には、物性化学講座が基盤となって有機化学基礎研究センター(現 先導物質化学研究所)が発足し、化学科から分離しましたが、平成6年には九州大学教養部の廃止に伴って、分子動態化学、分子設計化学講座が増設されました。

 平成10年から12年にかけて大学院重点化が行われ、研究院制度の導入に伴い、大学の教育組織である「理学部化学科」、大学院の教育組織である「理学府分子科学専攻および凝縮系科学専攻(化学コース)」、研究組織である「理学研究院化学部門」が設置されました。教育研究上の基本組織となる化学部門は無機化学系(無機化学、錯体化学、無機反応化学)、分子集合系(界面物理化学、分散系物理化学、非平衡系化学)、集合物性系(溶液錯体化学、状態解析化学、反応分析化学)、有機化学系(構造有機化学、有機反応化学、物性有機化学)、分子構造系(構造化学、量子化学、計算化学)、生物化学系(構造機能生化学、生体情報化学、量子生物化学)の6大講座、18専門分野から構成されました。この制度では、教員は化学部門に所属し、分子科学専攻、凝縮系科学専攻(化学コース)や化学科での教育に責任を持ちます。平成16年の国立大学法人化を経て、平成20年には理学府の再編に伴って大学院の教育組織は「理学府化学専攻」に一本化されました。同時に、基本組織である化学部門では、それまでの6大講座が無機・分析化学、物理化学、有機・生物化学の3大講座へ集約されるとともに、科学の様々な分野を融合し、化学の新しい領域を切り開く革新的な研究を行う複合領域化学講座が新設されました。これにより、科学技術の目覚ましい発展や社会情勢の急激な変化によって要請される新しい研究分野への迅速な対応と、不変的な基礎化学の研究、教育の継続を両立する体制が整いました。

 大学院教育においては、平成17年、19年には「魅力ある大学院教育」イニシアチブ、大学院教育改革支援プログラムに採択され、理学府に新しい2つの教育プログラムが設けられました。1つは先端学際科学者の育成を目的としたフロントリサーチャー育成プログラムです。このプログラムでは、科学全体を俯瞰でき、未来に向けた新しい科学を開拓する研究者の養成を目指しています。もう1つは高度理学専門家の育成を目指したアドバンストサイエンティスト育成プログラムで、卒業後に社会とのつながりを指向する学生のためのプログラムです。これら2つのプログラムと従来の教育課程を組み合わせることにより、科学全般に対する幅広い教養と化学に関する高度な専門知識を兼ね備えた人材を育成しています。また、平成19年には、工学府、システム生命科学府の関連専攻との協力関係の下でグローバルCOEプログラムに採択され、博士後期課程に未来分子システム科学コースが設置されました。その後、平成25年には、工学府、システム情報科学府と協力して博士課程教育リーディングプログラムに採択され、5年一貫の分子システムデバイスコースを立ち上げました。これらの大学院教育プログラムを通して、高度な研究能力を持つ若手研究者の育成ならびに国際的に活躍できるリーダーの育成を目指しています。

 以上のように、理学部化学科・理学府化学専攻・理学研究院化学部門では、化学の研究、教育、産業の分野で活躍できる専門家の育成を目指し、研究・教育面での整備が行われてきました。今後も、研究者、教育者、技術者といった高度な化学的知識や思考を活かせる職業に携わり、国内外の中核的・指導的役割を担う人材の育成を目指します。


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