高校生の皆さんへ


 九州大学理学部化学教室は、広範な化学の分野を十分にカバーできるほど多様な専門分野の研究室があるのが特徴です。私たちの研究室は、その中の有機化学系講座の物性有機化学研究室です。炭素原子を中心にいくつかのヘテロ原子(窒素・酸素・ハロゲン・硫黄 etc)を含んだ骨格からなる有機化合物、更にはその金属錯体が研究対象です。目的に応じて分子を設計し、それを自分で合成し、その構造や性質を明らかにしていくことにより、化学の発展に寄与しています。
 さて、皆さんの周りに目を向けてみましょう。勉強の際に使っているであろうラインマーカーには蛍光性の有機色素が含まれています。このページを閲覧するのにパソコンを使っていますが、パソコンの中にあるデータを保存するのに、安価な大容量記憶メディアとして最近CD-Rなどが使われるようになりました。このCD-Rの記録面には光で構造が変化する機能性有機化合物が用いられています。皆さんが体調を崩したときに服用する医薬品の多くも有機化合物です。有機化合物が現代社会の生活になくてはならないものだということが、これらの例からもよくわかると思います。
 こういった化合物が世の中の役に立つようになる前に、基本的なことが理解されていなければなりません。まず、その有機化合物がどのような構造と性質を持っていて、構造と性質の間にどのような関係があるのか? 有機化合物をどのようにしたら人工的に合成できるのか? そして、さらに世の中に役に立つ化合物を生み出すためには、どのような工夫ができるか? これらが、私たち理学部の人間が取り組むべき課題です。そして、私たち物性有機化学研究室では、今ここで述べたことに深く関係した研究に取り組んでいます。
 高機能性物質の開発にも不可欠な有機化合物の理解を深めるために、光や熱の作用で色が変わる有機分子結晶やイオンを捕捉する有機金属錯体を設計・合成し、物性と構造との関連を明らかにする研究を行っています。また、多様な原料を利用する立体選択的合成反応の開発研究も行っています。

(a) 光を当てると結晶の色が黄色からオレンジ色に変化し、暗所に放置すると元の黄色に戻ります。
(b) イオンを箸で掴むようにして運ぶ機能を持つ金属錯体です。
(c) 原料の立体化学に依存することなく、反応剤Aを用いるとどちらの原料からもトランスアジリジンが、反応剤Bを用いるとシスアジリジンが選択的に得られます。
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