FR院生企画シンポジウム
ロマンチック・バイオサイエンス
2009/03/13
講演概要
「ある生物学者の放浪:出会いの偶然と必然」
児玉先生
高校時代、オパーリン「生命の起源と生化学」(訳
江上 不二夫、当時、名古屋大学理学部化学科教授)を読んで生化学者になることを決める。
江上先生に師事しようと名古屋大学理学部へ入学するが(1960)、先生は東大に移られていたので、生物学科へ進学(1962)。
夏の臨海実習でウニ卵の受精と発生を飽きることなく見つめ、ニワトリ卵発生実習で胚のin vitro培養で心臓拍動まで至ることに感激。
岡崎 令治さん(化学科)の生化学の講義に深く感銘(1963)。
大学院は、いちばん自由に見えた
森 健志先生の研究室へ(1964)。
細菌Cytochromes cにすっかりはまり、物理化学の猛勉強。
時々、物理学科の講義に出かけ、
大沢 文夫先生に出会う。
博士課程では、実験はあまりしないで、大沢先生に監修をお願いした新講生物学という高校参考書を院生仲間と執筆。
課程修了直前、修士のときに見つけていたDiauxie現象を4年生の
島田 勝彦くんと一緒に幾度となく徹夜実験して、学位論文にまとめる。
ヘムタンパク質の研究をするため、
谷口 茂彦さんのいる広島大学歯学部生化学教室の無給副手になる(1969年、2年後に正式に助手)。
Naイオン要求性細菌の発見をきっかけに、生体エネルギー論へ強い興味を抱く。
江橋 節郎先生の紹介でUniversity College London 生理学教室で
RC Woledgeと筋タンパク質の熱測定を始める(1974年)。
その過程で、ミオシンATP分解の中間過程に吸熱過程が潜んでいることを偶然発見。
順天堂大学医学部薬理学教室講師として帰国(1977)。
小川 靖男教授の理解のもとに、熱測定装置の開発、ミオシンATP分解、Caポンプの熱力学的研究を精力的に展開。
再度の英国留学を経て(1981)、谷口さんに請われて岡山大学へ移り、ストップトフロー熱量計の開発を始める(1982)。
遠藤 実先生の推薦でPhysiological Reviewsへの執筆(1983;印刷は1985年)。
執筆中に、タンパク質反応のエントロピー駆動過程における水和変化の重要性を認識。
この頃、
柳田 敏雄さんと知り合う。
一方は一分子イメージングで名を高めるが、片方は生体熱力学という地味な道を歩む。
Royal Society Londonの招聘研究員として、Plymouth臨海実験所へ(1986)。
Howarthさんに顕微鏡下の微小はんだ付け技術(温度センサー作成のため)を習う。
「センサーはスパッタリング法でつくるべき」という
藤目 智さんの示唆のおかげで、ストップトフロー熱量計がほぼ完成(1990)。
学会のセッション座長をしていて
鈴木 誠さんと出会い(1992年)、長年の願望であった水和測定の途が開かれた。
九工大(1992-2005)では、学生教育への熱心さが禍して、学部長までして定年。
「日本各地の縄文系対弥生系人口比率決定に迫る:物理学者のDNA人類学への転進」
住先生
彼は岐阜県北半分の飛騨で生まれ、高校卒業までその山河にどっぷり浸かって育った。
卒業後都会に出てもその思い出は心を豊かにしてくれた。
定年後は故郷に帰って、故郷のためになることをしようと思った。
彼は理論物理学者で、大学での最後の十年間は光合成を研究した。
光合成の逆は呼吸なので、光合成を知ると呼吸も知るようになる。
呼吸は細胞質中のミトコンドリア(mt)で行われる。
mtは元は独立のバクテリアだったので、独自の(mt)DNAを持っている。
mtは母親のみから伝えられるので、母方を通じて先祖から不変に伝ってきた。
これを利用して、この15年間に現代人のルーツに関し革命的事実が明らかになってきたことも知った。
飛騨は、隣国との地理的障害のため明治大正期までほぼ陸の孤島だったので、ルーツは他国と違うと思っている人が多い。
そこで、DNAにより飛騨びとのルーツを探ることが彼でも出来ると思った。
光合成研究を通じ生物学者の知り合いもあったからである。
岐阜県の南半分、美濃の人たちについてはmtDNAの良いデータがあった。
美濃はほぼ平野で水田稲作を旨とする弥生人が、飛騨は山また山で狩猟採集の縄文人が住み易い所だった。
mtDNAが縄文人と弥生人に由来する人をそれぞれ縄文系と弥生系とすると、飛騨と美濃の対比から、日本各地における縄文系対弥生系人口比率を決めるための基本数値が得られることを発見した。
人類学で画期的である。
「単細胞の底力」
中垣先生
「単細胞」という言葉は、「それほど賢くない」という意味をもっているが意外と賢いことがわかってきました。
原生生物である真正粘菌変形体は、巨大なアメーバ様生物であり、迷路をはじめとしたパズルを解く能力をしめします。
粘菌には脳も神経もありませんので、これらの賢さは、同質要素の相互作用から生み出されると考えられます。
粘菌の各部は、本体から切り離されても死ぬこと無く個体として再生できますから、潜在的に自律性を有しているといえます。
このような見方に基づいて、賢さの仕組みを考えてきました。
パズル問題の解法と簡単な時間記憶能についてご紹介します。