Rigaku AFC-7R equipped with a Mercury CCD system
Rigaku AFC-7R + Rigaku Mercury CCD
この装置は化学部門の共通機器である。現在、錯体化学、無機化学、放射化学の測定を始め、有機化学研究室の先生からの共同研究にも可能な限り対応している。装置本体はX線発生装置が大部分を占める。防X線カバーには鉛が含まれ、X線を吸収する。ただし、高輝度X線の場合には、防X線カバー程度で安心するのはやや危険であるので注意して欲しい。特にダイレクトビームの方向には自分の身体を入れないように習慣付けることが望ましい。ダイレクトビームの方向には万が一のために、通常鉛板が置かれている。この装置でも向かって左右横方向には防X線カバーの中にさらに鉛板が置かれていることに注意してほしい。CCD検出器は右側にある白い横長の箱である。X線は物質(電子)にあたると散乱する(飛び散る)。散乱強度はX線入射方向からの角度の関数として表される。入射方向の散乱強度が最大であり、そこを0度とする。そこから何度傾いているかを2Θ角と定義する。Θで入射し、Θで反射して出て行くことからトータルで2Θと定義する。2Θが大きくなるにつれX線の散乱強度は減衰する。つまり、入射X線の大部分が入射方向に向かっている。我々は、それよりも比較的弱く散乱してくるX線の干渉現象に注目して測定を行うことになる。
Rigaku AFC-7R equipped with a Mercury CCD system
実際、どのように単結晶を固定して測定を行うのかをお見せしよう。左に一例として、ガラス棒先端にエポキシ樹脂で接着した単結晶の顕微鏡写真を示した。この結晶のサイズは 0.3-0.4 mm 程度である。サイズが大きすぎる場合、照射X線ビームから結晶がはみ出してしまうため、かみそりの刃を使って結晶の切断・整形を施さなければならない。手先の器用さと熟練が要求されるが、勿論、「慣れ」ということもある。練習すれば上手になるでろう。さて、単結晶に単色性の良いX線(ある特定の波長のX線)を照射すると、いわゆる波の干渉が起こり、強めあったり、弱めあったりすることになる。この現象はX線が電子によって散乱すること(四方八方に飛び散ること)によって引き起こされる。結晶は分子がある一定の秩序で配列してできるものである。分子の規則配置は電子雲の規則配置を与える。その規則性に従って波の干渉現象が起こる。その根本的な原理を示すところがブラッグの反射条件である。これを写真に焼きつけるとどうなるか。X線に感応するフィルムで写真を撮ると、黒い点が多数現われる。点の濃いところは回折X線の強度が高いことに対応し、薄いところが強度の弱いところに対応する。それを測定によって明確に決定する上で本装置が威力を発揮する。以前はシンチレーションカウンターが用いられたのに対し、現在はIP(Imaging Plate)やCCD (Charge-Coupled Device)が主流となっている。後者は2次元検出器であり、迅速に多数の反射データに対する情報収集が行える点で優れている。
Rigaku AFC-7R equipped with a Mercury CCD system
各ブラッグスポットには反射面の定義に由来するミラー指数(hkl)が割り当てられる。hklはそれぞれ整数値である。例えば、001面による反射が観測されたり、1−12面による反射が観測されたりなどと定義される。実際の測定では、各ミラー面によるX線回折強度を測定する。実験情報として収集したいのは回折X線の相対強度分布である。X線回折は結晶中に存在する電子によるものであるため、この測定手法では電子密度分布に関する情報が得られる。しかし、実は実測の情報は長さの逆数の次元の情報に対応する。これをフーリエ変換することにより長さの次元の情報に変換する必要がある。つまり、実測データの相対強度分布をフーリエ変換することによって実際の長さの次元で表される電子密度分布の情報が得られるのである。含有原子を空間にばらまくことにより結晶中の電子密度分布を適切に組み立てることができれば、それを実測の電子密度と比較し、仮定したモデルが正しいか否かを知ることができる。実測のモデルと仮定したモデルの比較を最小二乗法と連動することにより、各原子の空間座標位置を最小二乗計算で決定することができる。すなわち、分子構造をオングストローム単位で決定することができる。この手法は最良の構造決定法と言っても過言ではない。ただし、結晶試料、しかも単結晶(2つ以上の結晶がはり合わさった双晶ではだめです)が得られることが条件となる。最近では粉末試料でも構造が決定できたり(リートベルト解析)、双晶でも構造が決定できたりするが、これらの手法は全ての試料に適用可能というわけではない。とにかく、一般に、単結晶が得られればこの手法を適用することができ、分子構造をÅの次元で決定できる。物質の反応性等はその構造と密接な関係を持つため、構造を決定しながら反応論や物性理論の研究を進めていくことが極めて重要であろう。なお、得られた反射データと格子定数の数値データを基に解析を行う。上の写真には本室に設置されている構造解析用ソフト(MSC/Rigaku teXsan)がインストールされているSilicon Graphics O2 2台、ケンブリッジ結晶構造データーベース専用のLinuxマシン、Gaussian03分子軌道計算専用ワークステーション2台、エミュレーター用WindowsPC1台、制御用WindowsPC2台が設置されている。実は、最近制御PCのトラブルを生じ、以前のWindowsNT4.0に代えWindowsXPの制御マシンへの入れ替えを行った。