九州大学 理学部化学科/大学院理学府化学専攻/大学院理学研究院化学部門
理論化学研究室について
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2024年9月24日(火)〜27日(金)に東京大学物性研究所(柏市)で開催されたワークショップCurrent and Future Computational Approaches to Quantum Many-Body Systems 2024 (CompQMB2024)にて、黒木博由さん(修士2年)がポスター発表を行いました。
【ポスタータイトル】
Quantum subspace compiling of the time-evolution operators for molecular systems by using sequential
optimizers
研究概要
理論化学研究室では、以下のことを目標に研究を進めています。
化学は、分子および分子集合体の構造、性質、変化を解明することを目的と した学問であることは周知のとおりです。量子化学(計算化学)は、これらを、 シュレーディンガー方程式などの第一原理に基づいて、経験に頼らず理論的に 解明していくことを目指しています。
量子化学は、量子力学がその建設の後、数年を経ずして Heitler と London に よって水素分子に応用されて以来、計算機の発達とともに進歩し、現在では、 数原子からなる小さな分子の電子状態については、数 kcal/mol の精度で励起 スペクトルを予測し、化学反応のポテンシャルエネルギー曲面も非常に高い 精度で得ることができるようになってきました。実験事実の解明のみならず、 気相化学反応を十分に予測しうるような段階も近づいています。また、一方で、 小・中規模の分子だけではなく、実験室で扱われる大規模なリアル系をそのまま 計算できるところに手が届こうとしている段階にもあります。
とはいえ、化学の現象は、まだまだ複雑・多様で、それらの現象を経験的な パラメータを使わずに、第一原理から解明していこうとする量子化学の試みを 容易には許さず、残された挑戦すべき課題も数多くあります。生体分子、巨大 フラーレン、金属クラスターなど大規模な系を、反応に関わる重要な部分だけに ターゲットを絞りいかに効率よく記述するか、反応予測もできるほどに十分に 精密な記述をいかに達成するか、孤立分子だけなく、固体表面、溶液などの 環境下での化学反応をいかに取り扱うか、重い原子を含む系の電子構造、化学 反応を相対論的な効果を取り込んでいかに記述するか、これらは、残された 課題の一部です。本研究室では、このような認識を踏まえ、大規模系の理論と 高精度理論の両面とその統合を以下の研究などから、模索しています。
- 励起状態も高い精度で記述できる精密電子相関理論
- 相対論効果を取り込んだ分子軌道理論
- ab initio 分子軌道法に立脚した化学反応ダイナミクス
- 溶媒の量子化学効果を取り込んだ分子動力学計算
- 溶液中のプロトン移動のダイナミクス計算明
- 量子コンピュータを用いた量子化学計算のアルゴリズム開発
- 生体分子の構造と機能の相関の解析